ヘッドフォンアンプを作る(電源回路編)


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Part1 さて、どんなのにするか

 さて電源回路なんですが、ちょっと思うところあって、今回はシンプルなもの(言いかえればクラシカルのもの)に戻してみたいのです。思うところというのは、説明が難しいのですが、簡単に言ってしまえば、フォノEQはバッテリ電源、パワーアンプはチョークコイル・インプット型の非安定化電源であるのに対し、このプリ兼ヘッドフォンアンプだけがフィードバック制御の定電圧電源というのは、どうもバランス(というか釣り合い、とでも言えばいいのか)が悪いような気がしてしまうのです。

 かといって非安定のままではハムノイズが心配なので、いろいろ考えた末、トランジスタによるリプルフィルターで、基準電圧はツェナーダイオードで作るタイプはどうだろうか、と思ったわけです。まあ、これでもフォノEQやパワーアンプが増幅素子なしの電源としているのに対して、はたしてバランスが取れると言えるのか疑問ではありますが、少なくともフィードバック・ループがないという点では共通していると言えるでしょう。

 ただ誤解を招かないように言っておきますが、このほうが音がいいなどと主張するつもりは微塵もありません。では何なのかというと、ある意味、自分の技術的なスタートラインとでもいいますか、ここから始めたんだという地点を明確にしておきたいというほどの意味なのです。ま、あまり深く考えるほどのことじゃありませんてば。

 ということで、まずはこの回路です。

 

 うーむ、昔どっかで見たことあるような・・・ないような(笑) 実はこれ、私が生まれて初めて作ったプリ(もちろん雑誌のデッドコピーでした)の電源回路なんですね。うわ、なつかしいわー。ただ、記憶に頼って描いてますので、細かいところとか定数とか違ってるかもしれません。

 これをベースにして、下半分も加えて正負電源として、電圧値などを再検討すれば、何とか使えそうですね。

2009.11.8


Part2 正負電源にしてみる

 ということで、正負電源として、電圧値などを再検討したものがこちらです。

 

 ツェナーに流れる電流を4mAとすると抵抗(合算値)は1.4KΩとなります。ちなみに上の図ではVRほぼ中点でそのようになりますが、別にわざわざVRを使わなくとも、例えばR=1.5KΩとしてツェナー電流=3.73mAで全く問題ないでしょう。
 出力電圧はツェナー電圧−トランジスタのVbe×2なので、概算ですが、9.1(HZ9 C1)+10.0(HZ11 A2)−0.6×2で、17.9Vとなるはずです。

 ところで原回路の0.2Ω5Wの抵抗は、次の1000uFのCと組み合わせてLPFになっているんですかね? だとすると
原回路の場合 fc=1/(2πCR)≒0.159/(10^-3×0.2Ω)=795Hz うーむ、あまり意味はないようにも思えるのですが・・・なんなのでしょうね?
 0.2Ωと組むのは1000uFのCではなくて、「トランジスタによるリプルフィルタ=大きなC」、こちらだと考えると、トランジスタのhfeをそれぞれ100と50程度としても、大きなC=220uF×100×50=1.1Fと超巨大なコンデンサと同等と考えられるので、それなら fc=1/(2πCR)≒0.159/(1.1×0.2Ω)=0.72Hz となるわけですね。うむ、納得!

 ちなみに今回の場合、コンデンサを330uFと1.5倍にしてあり、トランジスタも比較的新しいので、hfeも大きくなっているだろうということで、等価的な巨大コンデンサの容量も、少なくとも倍くらいになっていると見て、抵抗値は半分の0.1Ωにしておきました。

2009.11.9


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Part3 基板パターンを考える

 やっつけ仕事的な作図で申し訳ないですが、こちらがパターン図です。部品面から見た、いわゆる透過図になっています。回路図と見比べていただければ、何となくわかるかと思います。

 


部品をすべて取り付けてみましたが、まだ裏側の配線はしていません。
ちなみに330uFと470uFは、ちょっとリッチにMUSE KZにしてみました。

 

 2009.11.16

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Part4 導通テスト

 基板ができたので、現用中のプリアンプに接続して様子を見ているところです。

 
左下に2枚ある基板がフラットアンプ基板。右上がこれまで使っていたFET電源。
そして今回の基板は、トランスとフラットアンプの間の空地に仮に置いた状態です。 

 2009.11.20

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Part5 ヘッドフォンジャックの配線

 電源基板を今回のリプルフィルターに交換する前に、プリにヘッドフォンジャックを取り付けて、手軽に試聴できるようにしようかと思います。配線は下記のようにしました。

 
今回使用したヘッドフォンジャックは、ごく一般的なもの(8端子+グランド)だと思いますが、
別に規格が決まっているわけではなさそうなので、モノによって番号など違っているかも
しれません。要注意ですね。


 
見にくい写真でたいへん申し訳ないです。せめてものお詫びに実体図を付けておきます。

 2009.11.22

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Part6 取り付け、そして試聴

 電源基板をリプルフィルター(以下RFと略)に交換し、試聴を繰り返しました。おもにヘッドフォンによる試聴です。

 
一番上に見える二つの黒いブロック電解コン(35V4700uF)を付けたまま
RF基板に接続したので、厳密にはPart2の回路図とはちょっと違います。



こちらは取り外したFET電源。下の二つの電解コンはBlackGateです。

 さて聴いてみた印象ですが、最初はなかなか違いがわからなくて、FLATアンプが共通なので、際立った違いはないのかと思っていましたが、徐々に(エージングが進むほど)カドが取れた、なめらかな印象が強くなってきました。例えて言えば、これまでのFET電源を「かき氷」とするなら、今回のRF電源は「ソフトクリーム」のような感じでしょうか。
 なんとなく昔なつかしいような雰囲気が、全面的にではなく、ホンのちょっと顔を出すみたいな・・・といっても音質的に後退したような印象はなく、なかなか好感の持てる音質でした。

 ところで、お蔵入りとなったFET電源なんですが、MOS-FETのペアとBlackGateが何とも勿体ないです。これらを再利用して”新RF電源”を組んでみるのも面白そうですねえ。

 ところで、取り付け用の基板サポートに見慣れないものを使っている(上側の写真)のに気づかれたでしょうか? これは木の丸棒を適当な長さにカットしたもの。実は従来使っていたサンハヤトの基板と、今回使った秋月の基板とで一見互換性があるように見えますが、四隅の取り付け穴の位置が微妙に(およそ2ミリほど)違っていて、そのままでは入れ替えできないので、丸棒サポートのほうは上下で取り付け穴をオフセットしてあるわけです。願わくば、どこかで、こういうオフセット・基板サポートを市販してくれませんかねえ。

 2009.11.25

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Part7 新RF電源”RF02”を試聴

 MOS-FETのペアとBlackGateを使って、他にも多少の変更を加えた新RF電源基板を接続して、再び試聴を繰り返しました。ところで説明の都合上、これまでのトランジスタによるRF電源をRF01、今回のMOS-FETによるものをRF02と呼ぶことにします。

 ところでRF02ですが、RF01との相違点は、1.トランジスタのダーリントン接続の代わりにMOS-FET(2SK214・2SJ77中古品)を使用。2.出力コンはMUSE KZ 50V470uFに対し、BlackGate 50V220uF中古品を使用。3.ツェナーとパラレルに入るCはMUSE KZ 25V330uFに対し、あり合わせの緑色MUSE FX 25V220uF新品を使用。4.±各出力から18KΩの抵抗でアースに落とした点。などです。


18Kの抵抗は電源OFF時の50V220uFからの逆流からMOS-FET
保護する(18Kのほうに電流を流す)目的で挿入したものです。
それから発振防止の意味でMOS-FETのゲートに470Ω〜1KΩ
程度を挿入したほうが良さそうですね。




MUSE FXって小さいですねー! BlackGateと同じ容量にはとても見えません。
まあ、耐圧は倍も違うんだけどね。



今回の2SK214の動作点です。

 さてRF02で聴いてみた印象ですが、正直なところRF01との違いがよくわかりません。同じようになめらかで、おおらかな印象です。そう、二つとも以前のMOS-FETフィードバック制御付きの電源のとき、ややもすれば感じた神経質っぽいところが全くないのです。
 さて、そうなるとRF01、RF02のどちらをメインの基板として使ったらいいものか、うれしい悩みができてしまいました。これは、もう少し試聴を繰り返さないと結論は出ないでしょう。

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 試聴を続けた結果、低域および中域ではあまり明確な違いが認められなかったのですが、高域のキレ味といいますか輝きという点で、どうやらRF02のほうに軍配が上がったようです。ま、具体的に言ってしまえば、マックスウェルのシルバーハンマーのカチンカチンいうのが、より鋭くキテたとか・・・謎?


 ところで、何でまた好き好んで古くさいツェナー式リプルフィルター(以下Ze式RFと略)を作ろうなんて、物好きなことを考えたのかと疑問に思っていらっしゃる方もおられるかと思います。でもですよ、もしかすると自分も含め自作ファンが Ze式RF を低く評価(というか無視または軽視)しているのは、昔まだあまり音のいいコンデンサとかが無かったころの Ze式RF の音の記憶によっているなんてことないでしょうか? 最近の音のいいとされるコンデンサとか、MOS-FETとかで作ってみると、案外目からウロコなんてことが・・・あるかもですよ。ま、別に保証はできませんが(笑) 少なくとも、わざわざこんな駄文を書いておこうかと思うくらい、今回の製作は個人的には満足度が高かったです。ハイ。

 2009.11.29

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